【新人OT必見!】作業療法プログラムの選択方法〜診療ガイドラインを用いて〜

エビデンスの知識

こんにちはk-hippoです。

私は作業療法士として身体障害領域(回復期リハビリテーション)で働き8年目となりました。自身が新人(1〜3年目)の時には、診療ガイドラインというものをあまり熟考せずにアプローチを組み立ててました。それは、周囲の先輩セラピストが行なっていることが正しく、勉強会に行った先生が正しく、それを真似することで良いアプローチが組み立てられると思っていたからです。

しかし、自分で勉強したり、論文を読み、徐々に教えてもらう人の発言が「何を根拠に話してるんやろ?」ということが気になり始めました。

根拠(evidence)=理論(theory)ではない。科学的に実証されていなければ理論はただの「個人の意見である」

このようにある方から聞かされ、確かにその通りであると思いました

少しでも共感できた方は、この記事をみることで、診療ガイドラインを活用しつつ、作業療法プログラムが立案できるようになると思います。

*リハ専門職の方々へ:Webサイトで見つけた知識などは信頼性や妥当性の観点から引用文献などにはできません。本記事では参考にした書籍はサイト下部、引用した論文は全てリンク作成するか、論文名を挙げていきます。そちらの原著を見ていただければ十分に役に立つと思います。

診療ガイドラインとは?

PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法を引用させてもらうと、

診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文章

と定義されています。

要するに質の高い研究を頭のいい人たちが集まってまとめて集約したものです。なんの実績もない、ただ少し経験した先輩などが語る経験論よりも何百倍も信頼のできるものです(笑)

また、診療ガイドラインは、質の高いエビデンス(特に臨床研究によるエビデンス)を系統的に収集し、そのエビデンスと専門家たちの知見などから推奨度を決定していきます。

推奨度とは?

各種の診療ガイドラインを見ていくと、「推奨度」「推奨グレード」などと書かれています。

この推奨度というのは、グレードA(強く行うことを奨められる科学的根拠がある。)〜D(無効性や害を示す科学的根拠がある。)などに分けられており、そのアプローチを臨床で優先すべきかどうかが示されています。現場で実用可能であり、それが多くの人に有益でかつ質の高い研究が集まった場合は推奨グレードAとなります。単に質の高い研究=推奨グレードではないということも注意しておきましょう。

基本的には推奨グレードの高い療法より選択していき、それが合わなければ順番にグレードの高い順に試していく考え方でよいと思います。

実際の対象者に対してどう推論するか?

「脳卒中上肢機能障害に対してどのようにアプローチすれば良くなるか?」という臨床疑問に対し、ガイドラインを用いてどのように推論するかを例に挙げて説明してみます。

まず「脳卒中」の対象者ということで、「脳卒中ガイドライン」を参考にします。(ガイドラインは数多く存在しますので、対象者にとってどのガイドラインが当てはまるかを先に考えてください。)

現時点で最新の脳卒中ガイドラインは「脳卒中ガイドライン2015」です。それを参考にすると、

  • 麻痺が軽度の患者に対して適応を選べば、非麻痺側上肢を抑制し、生活の中で麻痺側上肢を強制使用させる療法が強く勧められる(グレードA)=CI療法
  • 中等度の麻痺筋(手関節背屈筋、手指伸筋)には電気刺激の使用が勧められる(グレードB)
  • 麻痺が軽度から中等度の患者に対して特定の動作の反復を伴った訓練を行うことが勧められる(グレードB)=反復促通療法、川平法
  • 反復経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激は考慮しても良いが、患者の選択、安全面に注意を要する(グレードC1)

と記載されている。

ではまず対象者の上肢麻痺が「軽度」であるか「中等度」であるかを評価し判断します。(今回評価については言及しません。話が逸れてしまいそうなので・・・笑)

今回は「軽度」の麻痺手であったとしましょう。その場合にはグレードAのCI療法が最も推奨レベルが高く、効果も期待されるということが分かります。

「推奨グレードも高いし、じゃあそれをやろう!!」

っていうのは早く、この療法が眼前の対象者の方に適しているかどうかを判断しなければなりません。

ここからは、CI療法(CI療法に限らず選択した療法)が適応なのか?実際にできるプロトコル(方法)が組めるのか?対象者の方はその方法を説明されて同意の元行えるのか?などを判断しなくてはなりません。論文や書籍、最近はインターネットなどを用いても調べることができます。

各療法・方法には適応があります。その適応を満たさずに推奨グレードの高いものだけを行なっても効果は出ません。最悪の場合は悪影響を及ぼします。

ここでガイドラインはあくまで「指針」であって「最適な方法論」ではないことがわかると思います。進むべき方向(ガイドライン)が見つかったら、そこにいくための方法(専門の論文や書籍)を次は見つけます。

ガイドラインは「最低限」であり、「最新」ではない

各種ガイドラインは過去に研究されたものを包括し、システマティックレビューやメタアナリシス、RCTなどを集約したものです。例えば現在2019年6月ですが、脳卒中ガイドライン2015は2015年以前に出された研究の集約となります。しかし、2015年以降ももちろん質の高い論文はどんどん発表され、最先端のエビデンスというものは日々更新されていきます。

これらの研究が次包括され、ガイドライン化するまでは、自分の手で最新の研究や論文や書籍を読むことで知識をつけなくてはなりません。

上記の例の続きでいうと、CI療法の実践が推奨グレードAになっていますが、「Does Task-Specific Training Improve Upper Limb Performance in Daily Life Poststroke?」という論文では、CI療法の研究ではないものの、CI療法のコンポーネントである「量的な訓練」の限界を示唆する研究が発表されています。これは量を多くやればよくなるという訳ではなく、やる量で良くなるにも限界があるというお話です。

また、Effect of a Task-Oriented Rehabilitation Program on Upper Extremity Recovery Following Motor StrokeThe ICARE Randomized Clinical Trialという論文では「多くの量の課題指向型アプローチ」と「それと同量の通常の作業療法」と、「半分量の通常の作業療法」と3群に分けてリハビリを行なった結果、上肢機能の改善を示すWMFT、SIS /HANDの項目に有意な差はなかったとしています。

これらから、最新の論文を読み解けば、CI療法を行う上で最も必要なコンポーネントは「トランファーパッケージ」と呼ばれる行動変容を引き起こす関わりであることが推測されます。

じゃあ、CI療法を行う中でも、絶対的な運動量を確保しつつ、対象者に麻痺の手をより生活で使用してもらえるような関わりを持つことが「脳卒中上肢機能障害に対してよいアプローチになる」ということがわかってきました。

ここまできてようやく、

ガイドライン→対象者の選定→対象者への説明と同意→最新の論文から効果を吟味→対象者へ実践

となるわけです。(新人の方はここまできたら頭フリーズしますねwww)

終わりに

ここでは診療ガイドラインの活用について説明してきました。

本記事では「脳卒中上肢機能障害」(私が少し詳しいため)を例にあげましたが、どの疾患や病態でも思考過程は同じようにして良いと思います。

診療ガイドラインを用いる時に必要なことは

  • 診療ガイドラインは数多く存在するため、対象者に対して適切な診療ガイドラインを選択すること
  • ガイドラインは「指針」であって、「最適な方法論」ではないので、指針を元に対象者にあう個別性の高いアプローチを組み立てること
  • ガイドラインは「最低限」であり、「最新」ではありません。最低限の指針に沿って、かつ最新の知見を生かしアプローチを組み立てること
  • 最終的には本人・家族本意であるアプローチであること

これらを注意し、自身がアプローチを考える時、そして対象者と一緒に治療選択していく時に用いて頂けたらいいのではないかと思われます。

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