【臨床家の初めての研究】リハビリテーション研究入門

エビデンスの知識

こんにちはk-hippoです。

リハビリテーションの質を高めていくには、対象者個人のNBM(物語)を大切にすることも大切ですが、科学的根拠による裏付けも必要不可欠です。

私は作業療法士で、作業療法士の多くの方は研究を苦手としていると思います。しかし、作業療法士もこれからの時代は研究し、作業療法に対する科学的根拠を打ち出していかなくてはなりません。

2018年に行われた日本作業療法学会のテーマが【根拠に基づいた作業療法の展開】というものでした。ようやっと作業療法も根拠に基づいたEBOTというものが必要と感じたのでしょう。(もっと早く感じるべきでしょ)

しかし、かく言う私もあまり「研究」というものはできておらず、正直なところ私自身も研究に関していえば入門レベルですwww

これから記事を見ていただく方々は初めての研究ということで見て頂いていると思いますので、本当に基礎の基礎から一緒に勉強していきましょう。

*リハ専門職の方々へ:本記事では参考にした書籍はサイト下部、引用した論文は全てリンク作成するか、論文名を挙げていきます。そちらの書籍・原著を見ていただければ引用などに役に立つと思います。

研究テーマは疑問から生まれる

研究ってやってみたいけどどうやるの?そもそもテーマってどうやって決めるの?って段階が最初に当たる壁かと思います。

この記事を呼んで下さっている方の多くは臨床現場で働いていると思います。仕事をしていたら対象者に対してうまくいかないことや、調べてもわからないことなど常に疑問を持ちつつ、しかし、最善の方法を考えながらリハビリを展開していると思います。

また、自分が実践してみてこれはこうなんじゃないか?確証はないけど、これはいい気がするなどと思ったこともあるんじゃないでしょうか?

このような日々の「臨床疑問」から研究というのが生まれてきます。

臨床家の皆さんであれば、目の前の対象者の方々、もしくは病院・施設で扱っているデータ、将来よくしていく業務改善の中に山ほど疑問は生じるはずです。

それらを解明していく作業が「研究」といっていいでしょう。疑問を持ったら、それが「研究テーマ」になる可能性を秘めているものです。

よく「研究したいけどいいテーマが浮かばないんだよねー」とか言ってる人は、そもそも臨床疑問などを持ち合わせていない人でしょう。研究したいならそれだけの意識を持って対象者の方と接しているはずですから・・・笑

余談:研究テーマは「人」だけでなく「物」や「システム」に対してでもOK

いま「臨床疑問」から研究テーマが生まれる可能性があると述べましたが、最初はこれが一番早いテーマの見つけ方と思います。しかし、徐々に経験を重ねたり、すでに管理者となっていたりする場合には「あまり現場に出ない」とか「行政機関で働いてるから、ほとんど臨床にでない」という方もおられると思います。

しかし、研究テーマは「人」に対してのリハビリテーションに対してだけではなく、「物」や「システム」に対してでもOKです。ただ、少し難しくなる可能性もあるので、どうしても臨床にでないという方は、こういう方向性でも視野を広げてアンテナを張ると疑問→テーマというのに繋がるかもしれません。

疑問を持ったら調べてみる

自分の臨床疑問がすでに研究で明らかになっているものであれば、それを研究したところであまり意味がありません。また、完全に一致しないまでも、新規性、独創性、有益性がない研究に関しては、今後の医学の発展に寄与しないとして、学会発表や論文掲載にまで至らないこともあります。

ですので、疑問を持ったらそれがすでに研究されているのかどうかを調べてみる作業が必要となります。

情報収集を行う

研究疑問が生じたら「よし研究計画を立てよう!」ではなく、その前も最も大事とも言える情報収集・文献検索が必要となります。文献検索サイトについてはよければ以下の記事を参考にしてください↓↓

先に述べたように、すでに行われている研究を行っても仕方がないですし、他の研究との相関性やアウトカム(結果)をみて、自分の行う研究にはどのような要素が必要なのか?どのようなアウトカムをとれば新たな知見に発展するのか?などをこの先行研究の文献検索によって導き出さなくてはなりません。

この作業がかなり大変で、膨大な量の先行研究に目を通し、過去の研究からこれから行う研究のヒントや価値を見出すことが必要です。

研究計画を立てよう

先行研究を漁ったところで、自分の疑問が明らかにならなかったら、次は具体的に臨床疑問の何に対して、何を明らかにしていくのかを考えて計画を立てていきましょう。

注:あくまで初めての研究というテーマなので本記事では基本的で大まかな研究の流れしか説明しません。また別の記事でより詳しいものをUPするか、リライトしていきます

疑問を整理する

臨床疑問を整理することから初めてみましょう。ここからは例をあげながら説明していきます。まず、臨床のどの場面で疑問を感じたかを具体的にあげていきます。以下はリハ研究の進め方・まとめ方から引用させていただいた疑問のチェックポイントです。

  • 場所
  • 時間
  • 期間
  • 対象
  • 介入
  • 比較
  • 要因
  • バイアス
  • 評価
  • アウトカム   など

これらのどの場面で臨床疑問を感じたのか?それを考えてみましょう。

ざっくり言うと、対象者に筋トレの介入をしてたとして、この筋力練習の方法はいいのか?行う期間はいつがいいのか?時間はいつが適切なのか?どう評価すれば筋力が上がったことを証明できるのか?などです。

具体例:疑問を整理する

「回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中軽度片麻痺の人が発症から4ヶ月経過時点でCI療法を実施すれば良くなるのか?」という臨床疑問があったとします。そうすると・・・

  • 回復期ではなく、急性期または生活期ではどうなるの?(場所)
  • 発症4ヶ月って、それより早い・遅いであればどうなの?(時間)
  • 片麻痺の程度は?評価は何が妥当なの?(評価)
  • 何がよくなるの?(アウトカム)
  • 回復期ってことは日常生活のリハもしないといけないけど、他の介入との因果関係は大丈夫なの?(バイアス)

などなどが挙がってきます。これらの疑問に対し、具体的にどの部分に焦点をあてて明らかにしていきたいかを考えていくのです。


絞るまでの考え方

先ほどの例をとって、この介入で「回復期という場所でCI療法を行うことで、上肢機能を示すアウトカム(結果)がどう改善するかどうか?」に焦点を絞ります。

具体例:焦点を絞り、アウトカムを決める

先行研究をリサーチしているわけですから、回復期でのCI療法の実践はまだ多くはなく、超急性期〜急性期ではあまり他の療法と差はないという報告があることも分かっています。すこしCI療法とは話はずれますが、超急性期での積極的なリハビリテーション自体も効果はないのでは?という報告もあります。また、生活期では多くの改善例が研究報告で挙がっていることもわかっています(CI療法の数多くの研究は生活期での脳卒中片麻痺患者で効果を出している)。回復期で行うという新規性はあるのではないか?と考えます。

プロトコルは先行研究を参考にし、対象者を先行研究から参考にされるCI療法適応(手指や手関節の伸展角度やその他コントロールされていな重篤な疾患がない等)に当てはめます。そこから極力他の要因が影響しない(すべてADLは自立し、CI療法以外はリハの提供がない)ように行い、上肢機能を示すアウトカムはすでに妥当性・信頼性が確認されているアウトカム(FMA、ARAT、WMFTなど)から選択する。すると上記の疑問を焦点化して計画を立てられる

というようになります。ちょっとこれもざっくりな感じでしたけど、なんとなく思考過程がみえてくださればOKですwww

研究デザインを決める

介入する疑問が焦点化できたら、どういった方法で研究を行なっていくか「デザイン」を決めていく必要があります。

研究デザイン:研究を計画するにあたり,対象や介入方法,評価・測定方法,評価期間などを決めるための,様々な研究の種類です.症例研究や症例報告などの記述的研究と,観察研究横断研究症例対照研究コホート研究など)や実験的研究ランダム化比較試験(RCT)など)といった分析的研究に分けられます.”引用–日本理学療法士学会–”

研究デザインによってエビデンスレベルが変わってきます。

レベル内容
システマティックレビュー、ランダム化比較試験のメタアナリシス
1つ以上のランダム化比較試験
非ランダム化比較試験、対照群を置かない介入試験
Ⅳ a分析疫学的研究:コホート研究
Ⅳ b分析疫学研究:症例対照研究、横断研究
記述研究:症例報告やケース・シリーズ
患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

というような感じ分類されます。

ここから疑問を明らかにするにはどのデザインで行うべきかを考えます。当然上のレベルで行えることに越したことはないですが、通常臨床研究を行うなかでRCT(ランダム化比較試験)を行うことは、かなり難しいです。これは倫理的配慮という部分でも、盲検化するという意味でもです。

仮に初めの研究にも関わらず「RCTがエビデンスレベルも高いし、RCTでやろう!!」と思っても、対象数がそれに満たない、自分の知識がない、ランダム化できない、バイアスがかかりまくるなど様々な問題が生じ、はっきり言ってできませんwww

おそらく多くの方は症例発表やケースレポート程度はまとめたことがあると思います。それはエビデンスレベルⅤにあたります。

ですので、まず最初は今まで症例報告という形で経過報告だけをしていたものを、「シングルケースデザイン」などのデザイン方式を用いて介入研究にして行うことをオススメします。これを行うことで、研究ってこんな感じなのかな?っていう雰囲気がわかると思います。

シングルケースでも、しっかりとしたデザインを組んで、介入とアウトカムが十分なものであれば、質も高くなります。

具体例:研究デザインを決める

回復期という場所でCI療法を行うことで、上肢機能を示すアウトカム(結果)がどう改善するかどうか?」ということに焦点を当てました。

これを明らかにするためにはどうすればよいか。CI療法を行う群と行わない群に分けて対照群を作る?数人の被験者を募り、数名の人にCI療法を実施する?Ⅰ人の対象者に対してCI療法を実施する?と様々な方法が浮かびます。

しかし、研究機関や施設の規模、倫理的配慮や自分の研究能力などなどを加味し、現実的に可能な研究デザインを組み立てなければなりません。

シングルケースデザインを採用してみましょう。シングルケースデザインの中でもABデザインを採用してみます。

A期をベースライン期とし、B期をCI療法介入期とします。


デザインが決まったら、詳しい方法を決めよう

疑問を絞って焦点化した時点で、なんとなくアウトカムはこれにしようと決められていると思います。

ここからは詳しい研究方法を考えていきます。

介入研究であれば、介入期間や時間、介入の詳しい方法、中止基準などを考えていきます。

観察研究であれば、追跡期間や対象期間、包括する群の性質などを考えていきます。

基本的には調べたいこと以外はバイアスを取り除くために、要因を固定できるようにするといいでしょう。

例えばABデザインで、介入の方法について検討したければ、ベースライン期と介入期の介入期間や介入時間、介入者、環境などは極力同じものとし、「介入方法」だけをA期とB期で変化させ、アウトカムを収集すると、その介入方法による変化であると言えるということです。

ここの詳しい方法については研究によって違うので、先行研究を参考にしつつ、具体的な方法を練っていくといいでしょう。

具体例:詳しい方法を決める

回復期という場所でCI療法を行うことで、上肢機能を示すアウトカム(結果)がどう改善するかどうか?」で介入研究であるシングルケースデザイン(ABデザイン)とすることにしました。各期の方法を以下に決めます。

対象:先行研究からCI療法のクライテリア(適応基準)に合致するもの1名

アウトカム:FMA /UE(Fugl-Meyer Assessment 上肢)、STEF、MAL

A期(ベースライン):介入方法は通常の作業療法で行われる上肢機能訓練。介入期間は3週間で、1日の介入時間は1時間。また、その他の時間で自主練習を1時間行ってもらう。

B期(CI療法介入期):介入期間、介入時間は同様で、介入方法をCI療法に変更。自主練習も同様の時間で行う。

各期の前後でアウトカムを収集し、改善度合いを比較する。もしくは視覚化する。

ってな感じですかね


研究計画が倫理指針に則っているか審査してもらおう

ここまで研究計画が立てば、研究開始はもう少しです。

研究計画は各々の施設の倫理審査委員会があると思いますので、必ずそこで承認を得てから開始してください。

ここからは研究、対象者や家族へのインフォームドコンセント、倫理的配慮、個人情報保護など留意する点が多くあります。

詳しくは厚生労働省HPに掲載されている「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に必ず目を通し、これに準じて研究を進めてください。

対象者にとって研究が有益である可能性があることと、その他リスクとなり得ること、それを踏まえて同意されるかということは必ず説明しておきましょう。

場合によってはセラピストではなく、主治医より説明が必要となる場合もありますので、研究責任者と相談し、本人・家族への説明は慎重に行なってください。

まとめ

研究を行う流れをまとめてみると

  • 臨床疑問を持つ
  • 疑問が解決できるか先行研究をひたすら漁る
  • 解決できなかったら、その臨床疑問の具体的にどこが疑問だったか焦点化する
  • それを明らかするためのアウトカムを選択し、デザインを考える
  • バイアスが極力かからない方法を考える
  • 倫理的配慮をおこなう
  • いざ研究開始する

ざっと大きな流れはこのようになります。

初めて研究をするとなると、わからないことだらけですし、普通の臨床現場とは全く違う思考も持たなくてはならないため中々踏み出せない人も多くいると思います。

ですが、これから先は作業療法士にも必ず必要な知識となりますし、皆さんが自分の職域を守っていくために、必要なことになります。

「作業療法なんで効果ないよ。だれがやっても一緒だし」って言われないように、少しずつ現場でできる科学的根拠の積み重ねをやっていきましょう。

まずは臨床疑問から行動に移すこと!!これから始まります!

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