【PT・OT必見】リハビリで知っておきたいお薬:眠剤編

リハビリテーション

こんにちはk-hippoです。

入院・入所中の対象者の方々や、脳血管疾患などを発症後に不眠症となって眠剤を服用し始めるというケースは少なくありません。

また、夜間せん妄や不穏が生じる認知症の対象者などは眠剤を服用することで夜間鎮静を図られます。

これは医療事故や転倒転落事故などを防ぐ「安全」の目的でもあり、スタッフ側の労働環境を守るための目的でもあると思います。

リハビリ職として眠剤と深く関わるとしたら、日中夜間の能力差により転倒リスクが上がってしまうことや、しているADLの低下を招くこと、日中のリハビリの時に本人の覚醒度が下がってしまい、リハビリにならないなどそういう場面で関わることがあると思います。

本記事では、眠剤とはどういうものであるかということと、副作用での日常生活場面での注意点、対応の方法などをUPしようと思います。

*リハビリ専門職、看護師、リハビリ学生へ:本記事では「チーム医療を担う医療人共通テキスト」を中心に情報をまとめました。引用文献や参考文献などはリンクを貼っていますので、そちらを参照してください。論文作成や症例報告などに役立つと思います。

不眠症とは

不眠症とは、睡眠のための時間・機会が適当に存在するにも関わらず、夜間に十分な質・量の睡眠が得られない状態が1ヶ月以上続き、日中の機能障害を生じる状態である。

チーム医療を担う医療人の共通テキスト 「薬がみえる」

とされています。

疫学的には成人の5人に1人は不眠症といわれています。

具体的に時間が示されているわけではなく、必要な睡眠には個人差があるため、3時間であろうが、8時間であろうが、昼間の活動に問題がなければ睡眠の長短については問わないとしています。

先行研究では48万人を超える脳卒中経験の対象者に対して睡眠とIADL(食事の準備、雑用、金銭管理など生活を行う上で必要な行為)の関連について調べたものがあります。これでは平均的な睡眠時間は7〜8時間であり、そこが一番健康的であったことがわかっています。

また、健康的であった方の30%程度は6時間以下の睡眠であったということもあり、少なくても健康的である方々がいることも示されています。

*逆に9時間以上の睡眠していた方々はIADLに問題を抱えているリスクが7〜8時間睡眠の方がに加えて約2倍ほどリスクが上がっています。

不眠症を引き起こす障害

単に眠れなくなってしまう不眠症を発症するパターンもありますが、不安障害により不眠に陥るケースも存在します。

脳卒中後の不眠に関与している可能性があることとしては、脳卒中後うつの要因があると思われます。脳卒中後うつは3人に1人は生じるとされており、アメリカで行われた研究で、脳卒中後うつに対して抗うつ剤をどの程度服用しているか?という研究がありますが、脳卒中後うつを発症している方の70%を超える人が抗うつ剤を使用していると報告されています。

不安とは、近い将来、危険や悪い出来事にさらされる可能性が高いと感じ、心配で心細く落ち着かない気持ちになることをいう。しばしば身体症状や行動の変化を伴う

チーム医療を担う医療人の共通テキスト 「薬がみえる」

とされています。

不眠症でおこる症状

日中の眠気、集中力・作業効率の低下、気分の障害や不安など生活上の支障を生じる他、身体的には高血圧や糖尿病などの疾患コントロールに影響を及ぼします。

不眠症では入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠困難タイプの4つがあります。それぞれ症状が異なるので、症状に合わせて効果時間の違う薬の検討が必要であると思われます。

睡眠障害型

  • 入眠障害:寝つきが悪く、入眠まで時間がかかる
  • 中途覚醒:夜中に何度も目覚める、その後なかなか眠れない
  • 早朝覚醒:通常より著しく早くめざめて、再び眠れない
  • 熟眠困難:睡眠時間は十分でも、眠りが浅く、熟眠感がない

不眠症の治療

まずは生活習慣の見直し、指導を行います。それでもQOLの改善に繋がらない場合には薬物療法を検討します。

また、厚生労働省から睡眠指針というものが発表されており、指導は指針に則り提案していければいいのかなと思います。

厚生労働省:平成26年 健康づくりのための睡眠指針2014 から引用

十分な睡眠時間などは上記にも挙げた先行研究があるように、年齢や疾患によっても左右されます。対象の方にあった睡眠というものは個別性が高いと思うので、その方にあった睡眠がとれるように支援していくことが必要かもしれません。

眠剤について

今回のテーマは不眠症に対して、知っておくべき「眠剤」ということですので、薬剤についてをここから説明させていただきます。

ここでは上記に挙げた「不眠症」とそれを引き起こす不安障害について同時に作用する【ベンゾジアゼピン系薬(以下:BZ系薬)】について紹介させていただきます。

主な一般名・作用・副作用など

主作用を簡単に述べると、入眠までの時間を減らし、入眠後の覚醒回数・時間を減らし、睡眠時間を延長させることです。

生理学的機序

γ–アミノ酪酸(GABA)は、中枢における最も豊富な抑制性神経伝達物質であり、神経細胞を過分極させます。

BZ系薬は、GABA(A)受容体の作用を増強し、神経活動を抑制します。抗不安薬、睡眠薬、抗けいれん薬などに分類され使用されていますが、基本的には抗けいれん作用、鎮静・催眠、抗不安作用、筋弛緩作用の4つの薬理作用を全て有しています。

体内動態・薬物相互作用

肝臓障害患者や高齢者に対しての投与は注意が必要です。

経口から摂取されたBZ薬は、そのほとんどが速やかに消化管により吸収されます。脂溶性の薬物が多く、速やかに脳に移行し効果を発揮します。

薬物の処理は肝臓で行われ、処理される過程の代謝物は一部脳に作用し鎮静効果を持続させます。その他処理されたものは腎臓へ運ばれ、尿中に排出されます。

処理は肝臓で主に行われるため、肝機能障害の方には使用に注意が必要です。

副作用

上図にも挙げていますが、詳しく挙げていくと

  • 大脳皮質の抑制  → 精神機能抑制(記憶や学習効果低下など)
  • 脳幹網様体賦活系の抑制  → 眠気、倦怠感
  • 内側前頭前野、扁桃体の抑制  → 前向性健忘(海馬機能抑制)
  • 脊髄シナプス前抑制  → ふらつき、転倒 呼吸抑制
  • そのた  精神依存、身体依存、耐性、奇異反応

が挙げられます。

リハビリテーションに関与する部分としてはこの辺りで転倒や学習効果の低下、記憶障害を誘発するなどでしょう。また、これをきっかけに認知機能低下に拍車がかかる場合も見られます。

必要以上に眠剤が効きすぎている場合にはNs、薬剤師、主治医に報告し、投薬コントロールを行ってもらえるように医療チーム全体で働きかけましょう。

また、このような副作用による一時的な症状であっても家族などは心配します。必ず説明は事前に行うことと、生じている症状に対しての説明を行えるようにしておきましょう。

転倒リスクを少なくする眠剤

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使うと転倒リスクを減らすことができます。

BZ系薬と化学構造が異なるが、同じくGABA(A)受容体のベンゾジアゼピン結合部に結合します。

BZ系は催眠、鎮静を促すω1受容体と筋弛緩を促すω2受容体どちらもに作用しますが、非BZ系はω1受容体への選択性がたかいため、筋弛緩作用の副作用が出にくいといった特徴があります。

薬剤名としてはゾピクロン、ゾルピデム、エスゾピクロンなどがあります。いずれも超短時間作用型の眠剤です。

特に注意すべき副作用

呼吸抑制についてはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)やSAS(睡眠時無呼吸症候群)の対象者については注意しましょう。

BZ系薬剤を使用することで、筋弛緩作用による上気道の狭小化や呼吸筋の弛緩、呼吸中枢抑制による低酸素時の呼吸促進反応の鈍化などが生じます。

重症のSASやCOPDの方々に対しては筋弛緩作用のないラメルテオンを用いるか、持続陽圧呼吸(CPAP)などで十分あ呼吸を確保したうえで使用しましょう。

非薬物療法で脳損傷者に対して行う睡眠改善ではレビュー上CPAPのみ効果を示すものがあったということです➡️リハビリテーションを効果的に行うためにCPAPを用いると良いという研究報告

臨床上での問題

臨床上で困ることは副作用で挙げたこと以外にも結構あります。

嚥下障害が生じている場合の摂食機能低下

以外と盲点ですが、臨床上ではよく当たる問題です。

日中や朝の食事の時に覚醒度が悪く、食事に介助が必要となったり、誤嚥、窒息のリスクを高めてしまう可能性があります。

特に脳血管疾患などの方々などで、機能的に嚥下機能障害を生じている場合には、嚥下筋の弛緩や、舌の巧緻性の低下、舌圧低下なども起因し、通常よりも誤嚥しやすい状況となります。

食事介助に人員を取られることで、スタッフの業務量も増大する可能性もあります。

食事場面などにも目を配るとよいかもしれません。

認知機能・高次脳機能低下に拍車がかかる

副作用による一時的な低下であればまだいいですが、長期的に覚醒低下状態に陥ると、適切な脳の活動が抑制されます。そうなると、脳活動の質と量が低下し、認知機能低下、高次脳機能低下に繋がってしまいます。

例えば認知症の方に眠剤を投与し、夜間の不穏などは落ち着いたかもしれませんが、日中の覚醒度も低下し、運動による刺激や会話、課題などからの認知機能の賦活が行われなくなると、認知症が悪化するといった本末転倒な結果になりかねません。

日中の状態を観察し、リスクや本人の病態の悪化、スタッフの業務量などを総合的にみて、一番合理的な方法を選択できるようにしましょう。

入眠してくれるが、日中のADL介助量が増大する

夜間入眠できるようになったが、日中に眠剤がのこり、起立や端座位保持ができずに介助量が増えるということがあります。

これは日中のNs、ケアワーカーの介助量を増やし、結局仕事量が増えてスタッフに負担がかかるというデメリットを生じます。

最悪の場合には、夜寝るための眠剤だったにも関わらず、日中も寝かされて、活動量が低下し、筋力低下を引き起こし、廃用していくという悪循環にもなりかねません。

日中は覚醒してくれるような薬剤、量にコントロールしてもらえるよう提案していきましょう。

リハビリテーション効率の低下

回復期リハ病院などのリハ中心の病院に入院されてる方で眠剤のコントロールができていない場合には、著しくリハビリテーションの効果を低下させます。

リハでは極力最大限の能力を引き上げていくことを目的とし、しているADLがより予備力を持って行えるように最大能力を上げていきます。

しかし、覚醒低下傾向に陥ったり、夜間転倒を行い疼痛を生じたりしているとリハビリテーションを行える状況にすらならない場合があります。

どうしようか・・・という状態になったら、当該病棟のNsや主治医に相談し、検討をおこなってもらうことも必要かと思います。

終わりに

本記事では不眠症についてのことと、それに関する薬剤や主作用、副作用を述べてきました。

作用する生理学的機序を詳しく知る必要性は高くないと思いますが、どういった理由でリスクが生じるかを知っておくことは必要かと思います。

臨床上では覚醒状態の低下した対象者の方々に関しては効率的なリハビリテーションを展開できないだけでなく、ADL場面で大きなリスクを伴います。

対象者の目の前にいて、一番状態を知っているのは看護師、ケアワーカー、リハビリスタッフです。チームで協力し、主治医、薬剤師と相談し、バランスのとれた睡眠をとってQOLが高められるように包括的なアプローチを行なっていきましょう。

*必ず服薬の調整は医師の指示の下で行うようにしましょう

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