こんにちはヒポ太郎です〜
私は回復期リハビリテーション病棟で作業療法士として働いており、主には脳卒中リハビリテーションに従事しています
その中でも多く自分を困らせたのは『脳卒中後上肢機能のアプローチ』についてでした
脳卒中の患者さんの多くは上下肢の麻痺が生じますし、特に上肢の麻痺というのは装具などでの代償手段が少なく、日常生活場面での使用まで繋げることがとても難しいと感じています
『脳卒中後上肢機能のアプローチ』ではCI療法、川平法、ロボット療法など様々な療法が確立してきています
その中でも本記事では【電気刺激療法】について述べていきます
- 電気刺激療法ってなんだろう?
- 電気刺激療法のエビデンスが知りたい
- 電気刺激療法を臨床で使ってみたい
上記のような悩みを抱えている方へ、参考となる解説を用意しております
では、みていきましょう!

電気刺激療法とは?

電気刺激療法は上図にまとめたような効果などがあります
簡単にいうと
皮膚から筋肉(神経)に電気を流し、外部から筋電位を操作してリハビリテーションの効果を上げたり、疼痛を緩和したりする方法
というような感じでいいと思います
分類としては治療的電気刺激(TES)と機能的電気刺激(FES)に分けられます
この2つの言葉の違いの差は近年の臨床での使用用途の変化により、かなり少なくなってきています
ざっくり意味を分けるとすれば
- 治療的電気刺激(TES):電気を流すだけが主
- 機能的電気刺激(FES):身体的な動きを出しつつ電気刺激を与える、または随伴して電気刺激を与える
というような差になります
電気刺激療法の適応

上記の禁忌事項・注意事項に当てはまらない方は使用可能です
必ず、主治医の指示に従って物理療法を実施してください
適応
- 脳卒中後リハビリテーション(筋力強化、随意性改善など)
- 末梢神経障害に対して
- 心不全などに対しての血流増加作用(静脈還流量の増加)
- 呼吸リハビリテーションの一環で十分な歩行困難例に対しての筋トレ
- 除痛
などなどが挙げられます
各種ガイドラインやシステマティックレビューでも効果が示された論文もありますので、適応するかどうかは対象者に合わせて過去の論文を吟味するとよいでしょう
電気刺激療法のエビデンス

電気刺激療法のエビデンスですが、様々なガイドラインで推奨グレードBとなっています
過去に研究も多くされており、システマティックレビューやメタアナリシスで有用であるということも発表されており、なおかつ臨床的に導入しやすいというため推奨グレードBとされているのでしょう
論文を紹介すると

このように弛緩性麻痺で亜脱臼が生じている対象者に対して、回復期の時期に電気刺激(NMES)を併用し、練習を組み入れることで、その後の脳卒中麻痺の機能を示す数値(FMA)に大きく差が出たという報告があります
1日180回ですから、IVESなどのFEEというモードを用いれば1単位(20分)もあれば180回の反復運動くらいはすぐに行えます
その後、ADL練習を行っても1〜2単位は動作練習に確保できますね

こちらの論文では感覚閾値帯の電気刺激(皮膚に電気を感じるか感じないかギリギリのライン)を当て続け、その後リハビリを実施した場合だと、普通にリハビリするよりも上肢機能が向上した
という報告がされています
これは電気を当てておくだけで、筋肉や脳の興奮性が高まり、実際にパフォーマンスする際に電気が流れていなくても、持続効果が練習効果を増幅させるといった研究になります

じゃあ何故推奨グレードAにはならないのか?というと、電気刺激療法というのはあくまで補完的治療であるといえるからだと思います
電気刺激療法は運動療法と組み合わせて初めて大きな効果を発揮します
ですから、電気だけ当てて『はい、良くなりましたー』というようなことはありません
必ず、本人の随意的な運動を引き出しつつ練習を行うことが大切です
電気刺激療法の実際
ここでは脳卒中リハビリテーションで良く使用されるIVESという機器を使ったリハビリテーションの方法を紹介します
まずIVESがどういう電気刺激療法かというと

電極を麻痺した上肢に貼付し、その電極が筋活動電位を感知し、電気刺激によって筋出力を増幅させるといった電気刺激となっています

原理としては上図のようになっており、中枢からの刺激を増幅させて筋肉に伝えるという役目を担っています
ではその電極をどこに貼ればいいのか?というと以下の図を参考にしてください


体には最も電気刺激に反応しやすい場所(モーターポイント)というものが存在します
筋肉に適当に電気を流しても筋収縮が得られずに、疼痛だけを感じさせてしまうことになります
より効率的に筋肉に電気を流すにはモーターポイントを捉えることが必須条件となります
モーターポイントには個人差がありますので、電極を貼る位置を徐々にズラしながら、最も筋肉が反応しやすい場所を探ると良いでしょう
モーターポイントを探索する機器がある施設ではそれを用いると良いです


ではどんな設定で行えばいいのか?

強さ時間曲線(SD曲線)というものがあります
この曲線を参考にして、対象となる筋肉(神経)に効果的な刺激を流せる設定はどんなパラメーターなのかを決めていきます
例えば脱神経筋に対してNMESを実施しようとして、パルス幅300μsecでどれだけ強い電流を流しても反応してくれないということです
機器によってパルス幅、電流強度、周波数が細かく設定できるものがありますので、詳細なパラメーターを設定できる機器をお持ちの方は、必ず対象者にあう設定となっているかどうかを確かめてください
ここで紹介しているIVESはパルス幅150μsec程度と記載されていますので、感覚閾値帯〜運動神経を刺激するのにちょうど良いパルス幅となっています
そのため、刺激強度(電流刺激)のつまみと周波数を変えるだけで誰でも簡単に効果的な電気刺激を使うことができます
臨床で用いやすいパラメーターの一部を紹介しておきます


これらのパラメーターで実施しつつ、積極的な運動療法により、運動回数を十分に実施し、目的に動作を引き出していってください
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