こんにちはヒポ太郎です
今回は、運動学習の中枢である小脳の機能についてみていきたいと思います
小脳梗塞、小脳出血により小脳の機能障害でリハビリテーションを必要とする方に対して、少しでも有益な情報となればと思います
脳梗塞のなかで小脳梗塞は全体の4%程度であり、脳出血のなかでは小脳梗塞は全体の10%頻度と、脳卒中全体からして小脳病変はそう多くはありません
『小脳疾患=失調症状』というイメージはあると思います
今回の記事では、なぜこの失調症状が現れるのか?を小脳機能を理解し、解釈できるようになります
難しいことではなく、小脳の基本的な機能を理解するのに見ていただけたらと思います
では見ていきましょう
小脳は大脳半球、脳幹の後方に位置し、小脳脚で連絡している。大脳皮質や視床・橋核などと連関し、運動学習・運動制御に関わる
小脳の解剖
小脳は橋の背側に位置し、上・中・下の3つの小脳脚で中脳、橋、延髄、脊髄とそれぞれ連絡しています
とりあえず、ざっくりの位置を覚えておけばOKです


小脳は虫部(真ん中部分)と半球(両サイド)にわけられます
さらに、半球は前葉と後葉に分けられ、それぞれ違う機能を担います
ざっくり説明しておくと
- 小脳半球前葉:四肢や体感の運動制御に関与
- 小脳半球後葉:運動企画や非運動性の機能に関与
これで小脳の『位置』と『機能』を、めちゃめちゃ大まかに理解できました
小脳の入出力経路
小脳への入力

小脳への入力は大脳皮質から橋核や脳幹網様体、オリーブ核を介して小脳へ情報が送られます(ピンク線)
どんな情報が送られるかは、後の『大脳小脳連関』で詳しく述べますが、簡単に説明しておくと
運動野から『こんな運動しまっせ〜』という運動指令の内容を小脳に伝えます
小脳からの出力

小脳からの出力は反対側の運動野へ投射があります。また、歯状核から前庭神経核への出力もあり、同側の姿勢制御に関して働いています(緑線)
ですので、片側の小脳損傷では損傷側と同じ側の上下肢に障害が生じます
小脳の機能
小脳の機能は、協調運動(運動調節)と運動学習が主な機能です
小脳は大脳皮質由来の運動企画情報を橋核経由で、伸展受容器由来の運動実行後の感覚情報を脊髄由来で受け取る。両者の比較をしそのズレを修正することにより、複雑な運動に必要となる複数の筋活動の正確なタイミングの調節を通して、四肢や体幹の精密で円滑な協調運動を具現する。さらに小脳は運動学習に関わり、練習や訓練による運動や技の上達を可能にする
脳卒中理学療法の理論と技術
要するに、大脳皮質(運動野)から生じた『こんな動きをするぞー』という思いと、感覚受容器から戻ってきた感覚『失敗してこけちゃった』を照合し、予測と結果のズレを修正して、次の運動に役立ててくれるということです
俗にいう『体で覚える』というやつです
私たちが動作を習熟していくのに、何度も失敗を繰り返して、徐々に上手になっていく過程で働くというイメージでOKです
小脳は機能別に脊髄小脳、橋小脳、前庭小脳に区分されます
それでは機能別に見ていきましょう
脊髄小脳(虫部および半球中間部)
小脳の姿勢制御は主に小脳虫部が担っています
小脳虫部は頭・頸部・体幹から、半球中間部は四肢の筋・腱・皮膚などから感覚情報を受けます

小脳のメイン機能のうち1つを担っている部分です
脊髄小脳では
- 受け入れた情報から運動エラーを検出しながら、修正を行う『フィードバック機構』
- 運動に先駆けて、前回の運動エラーを修正して次の行動へ役立てる『フィードフォワード機構』
の働きがあるとされています
何か動作を起こそうとするときに、予測的に姿勢を安定させるため、四肢・体幹の活動を調整する予測的姿勢制御(anticpatory postural adjustments:APA)という反応が起こっています
この反応についても、小脳からの出力が影響をしているとされている
橋小脳(大脳小脳連関)
小脳のメイン機能のうち、もう1つを担っている部分です
橋小脳には橋核を介して、大脳皮質ほぼ全領域からの入力があります
特に皮質運動野(1次運動野、高次運動野、前頭連合野)からの入力は強くあります(下図の①の皮質橋路)
大脳小脳連関を以下の図にまとめました

こんな図が出てくると
あっもう無理。ちょっと見るのやめよう・・・
という人が多発してしまいますが、一度じっくりと図の番号と照らし合わせながら、以下の説明をよく読んで、再度見てみてください!
①運動野などから『こんな動きするぞー』という運動情報を皮質脊髄路(錐体路)を通じて筋肉へ伝えると同時に、皮質橋路→橋核→橋小脳路の経路で、小脳へ運動『こんな動きするぞー(コピー情報)』が送られます(青線)
②実際に行った筋肉などからの感覚情報が小脳へ返ってきます(緑点線)
③『①でコピーされた運動情報』と『②で返ってきた(運動)感覚情報』にズレがないかを小脳で確かめます。ズレが生じている部分を赤核を通じて、視床へ送ります(緑点線)
④視床は小脳から送られた誤差情報を運動野へ返します(緑点線)
⑤運動野は誤差があったことを認識した上で、それを直すために運動方法を組み替えて指令を出します。その際に赤核を経由して運動修正を行います(青線)

めちゃめちゃざっくりすると
脳が『やろうとしている行動』を小脳に情報を送って、『やろうとした行動』と『実際起きた行動』に差があれば、その情報を視床を介して大脳に伝えるってこと
かなり分かりやすくまとめたつもりですが・・・いかがでしょうか?(笑)
番号順に線を追っていき、何度か見直して頂けたら必ず理解できてくると思いますので、がんばってみましょう!
前庭小脳(片葉小節葉)
前庭小脳は前庭神経を通じて前庭器からの情報を受け取っています。前庭小脳からの出力は前庭神経核を通じて、頸部の筋や外眼筋の運動ニューロンに出力され、歩行や姿勢の維持、眼球運動の制御に関与します
脳機能の基礎知識と神経症候 ケーススタディ
前庭小脳は書いてある通りに主に眼球運動などに関与します。小脳損傷後に目眩を生じたり、なにかフラフラするといった視覚的な訴えについては、この前庭小脳への損傷が影響していると思われます
私自身まだこのあたりは詳しく解説できませんので、ご容赦ください・・・
まとめ
小脳は大脳皮質や視床、橋核などと連関し、運動学習・運動制御に関わる
ということが、なんとなくでも理解できてきたでしょうか?
この連関を理解できると、小脳が損傷した時に運動調整ができなくなる(失調症状が現れる)という病態理解ができますね
今回は小脳の基礎知識を見ていきました、小脳の機能を場所別にまとめると
- 脊髄小脳:運動エラーなどを受け取って、修正するフィードバック機構や、運動に先駆けて修正内容を踏まえた行動に役立てるフィードフォワード機構がある
- 橋小脳(大脳小脳連関):大脳皮質から受け取った情報と感覚入力された誤差を視床に伝えて、情報のすり合わせを行う
- 前庭小脳:歩行・姿勢制御の時の頸部筋や眼球運動に関与する
ということでした
小脳の基本的知識はこれで習得しましたね!
最後までご覧いただきましてありがとうございました
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