アメリカ心臓・脳卒中協会の『成人脳卒中ガイドライン』における電気刺激療法のエビデンス

こんにちは〜ヒポ太郎です

今回紹介するのはアメリカ心臓・脳卒中協会が2016年に発表した『成人脳卒中リハビリテーションガイドライン』というもので、その中の【電気刺激療法】が関連している部分だけ抜粋してご紹介いたします!

Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery : A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association

タイトルの直訳として“医療従事者に向けた、成人脳卒中のリハビリテーションと回復のためのガイドライン”ってな感じです

成人脳卒中リハビリテーションガイドラインで電気刺激療法が関わる部分は以下の部分です

  • Spasticity : 痙性
  • Shoulder Pain : 肩の疼痛
  • Mobility : 動作性
  • Upper Extremity Activity : 上肢機能

今回は電気刺激療法が関わる部分だけの抜粋ですので、中身のわずかな紹介ですが、かなり多くのカテゴリーでエビデンスレベルや治療グレードなどを掲載していますので、ご興味あれば記事最後のリンクからご覧ください!

では見ていきましょう

もくじ

エビデンスレベルと治療グレードについて

成人脳卒中ガイドラインでは、図のようなエビデンスレベルとグレードに分類されています

ちょっと細かいので以下リストに詳細をまとめました(クリックしてリスト表示)

こんな感じでの治療グレード、エビデンスに分類されています

治療グレードはその方法が与える影響の大きさ、エビデンスレベルは研究手法による根拠の強さと解釈してください

例えば、治療グレード『Class Ⅲ』エビデンスレベル『LEVEL A』というものがあった場合は

  • 治療の有効性はなく、場合によっては有害である強い根拠(それを示す研究)がある

という解釈になります

エビデンスレベルがいい=いい治療方法』ではないのでご注意してください

電気刺激療法のエビデンス:痙縮

痙縮に関してのエビデンスは『治療グレードⅡb、エビデンスレベルA』となっています

質の高い研究において、有用性・有効性は、証拠や意見によってあまり確立されていない状態

ということのようです

即時的に痙縮を低下させるような効果を得た論文はありますが、長期的な効果としては認められていないという報告もあります

痙縮に関しての電気刺激では運動閾値帯、感覚閾値帯どちらでも効果は確認されており、100Hz以上での設定が多く、1〜2Hzといった周波数では痙性抑制の効果は乏しいとされています

痙縮筋の抑制を行いたい場合には、拮抗筋へのNMESを行うことにより、相反神経抑制機構を利用して抑制の効果を出していきます

また、直接的に痙縮筋にNMESを用いて抑制する場合には反回抑制機構を利用しての効果であると考えられています

相反神経抑制機構:筋紡錘からのインパルスはIa群繊維を上行し、α運動ニューロンを興奮させると同時に抑制性介在ニューロンを介して拮抗筋を抑制する

反回神経抑制機構:脊髄介在ニューロンであるレンショウ細胞により引き起こされる。レンショウ細胞は、α運動ニューロンの軸索側枝からの入力によって興奮し、同じα運動ニューロンを抑制する。このネガティブフィードバックシステムがα運動ニューロンの興奮性を制御している

エビデンスから身につける物理療法 (PT・OTビジュアルテキスト)より引用>

電気刺激療法のエビデンス:脳卒中後肩の疼痛

脳卒中後の肩の痛みについては『治療グレードⅡb、エビデンスレベルA』となっています

脳卒中後の肩の痛み(hemiplegic shoulder pain:HSP)については、過去の報告により差はありますが、70%もの人たちが影響を受けるという報告があります

NMESによる脳卒中後の痛みを軽減する効果は治療グレードⅡbと高くありませんが、本記事の後述であるように、亜脱臼に対しての効果があるため、亜脱臼から生じる疼痛などにはよい影響を与えるかもしれません(必ずしも亜脱臼と疼痛に相関があるというわけではありませんが)

ただ、近年では疼痛のない関節可動域などをアウトカムにした研究では、即効性での効果はなかったという研究(victoriaら2019)も報告されてきており、検討の余地が必要なところかと思われます

電気刺激療法のエビデンス:動作性

動作性に関わる部分としては、主に下肢や歩行の記述となりますが、『治療グレードⅡa〜b、エビデンスレベルA〜B』となっています

近年では下垂足(foot drop)に対してはFESを実施できる機器は多く流通するようになってきており、効果が証明されてきています

単下肢装具(AFO)とFESの効果を比較した大規模RCT(Kludingら2013)が実施され、その研究ではFES群とAFO群でどちらも有意な歩行速度の改善がみられ、尚且つ群間に有意な差はなかったとしています(FESとAFOで差がなかった)。さらには、FES群の方が満足度という点は優っていたという結果となっていました

これは装具を否定するというものではなく、FESという選択肢もできた上で、対象者によって、どの方法が良いかを検討する1つの要素として捉えるべきであると思われます

また、NMES単独の使用ではなく、運動療法と併用して行うことが望ましいでしょう

電気刺激療法のエビデンス:上肢機能

上肢機能については、脳卒中後亜脱臼について脳卒中後初期の介入であれば『治療グレードⅡa、エビデンスレベルA』となっています

肩関節亜脱臼に関してのNMESの報告は過去に多く報告されており、効果が期待できるものの1つとなっています

急性期で行われた研究が多いため、文中に『脳卒中初期(first few months after stroke)』と書いてあるのでしょう

可能な限り早期から導入していくことで効果が期待できます

ただ、NMESを行うだけでの持ち越し効果(電気刺激をやめても、その後整復された状態になる)は低いとされており、同時に運動療法を併用しながら電気刺激を行うことが必要です

メモ:肩関節亜脱臼に対する電気刺激する電極貼付位置は棘上筋と三角筋後部繊維が主とされています

まとめ

今回はアメリカ心臓・脳卒中協会が2016年に発表した『成人脳卒中リハビリテーションガイドライン』の電気刺激が関わる部分を抜粋してご紹介いたしました

関与した部分は

  • Spasticity : 痙性 (治療グレードⅡb、エビデンスレベルA)
  • Shoulder Pain : 肩の疼痛(治療グレードⅡb、エビデンスレベルA)
  • Mobility : 動作性(治療グレードⅡa〜b、エビデンスレベルA~B)
  • Upper Extremity Activity : 上肢機能(治療グレードⅡa、エビデンスレベルA)

以上の項目となります

ガイドラインはあくまで『治療選択の指針(方針の手助け』ということを十分に理解し、目の前の対象者の方への適切な利用をしていきましょう!

最後まで読んでいただきましてありがとうございました

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