こんにちはヒポ太郎です
今回の記事では『事例報告』と『症例報告』の違いについて解説していきます
どちらも同じような意味で使われていることが多いように思いますが、実はどちらも違う意味があります
自分が発表する時に『事例報告』なのか『症例報告』なのかでまとめ方が若干変わってきますので
まずはこの2つの違いを理解しておくことが重要です
この記事をみれば
- 事例報告とは何か?
- 症例報告とは何か?
2つの報告の特徴について理解することができます
ではみていきましょう!
理学療法士・作業療法士における事例報告

事例報告:クライエントとセラピストの相互交流的な関係や2者が作り出す状況、それをとりまく環境なども含む。臨床という文脈で生じる具体的現象を、構造化した視点から詳細に記述し、実践やその成果を検討したり、研究の前段階として探索的目的を持って検討される。研究手法としてエビデンスレベルは低いが、個人に対しての細やかなリーズニングや新規性のある介入などを学ぶことが可能
作業で語る事例報告: 作業療法レジメの書きかた・考えかた
要するに、事例報告とは、『事例』という、あなたが個別の事例に対して経験した貴重な介入をまとめた『報告』となります
クライエント(対象者)にとっての特別な介入や、環境、周囲の人の協力など、この事例でしか経験し得ないことでもいいので、それを細かく記録していき報告するものと思っていただけたらOKです
エビデンスレベルは研究デザインの特性上低いですが、低いからダメということは決してありません
エビデンスの高低ではなく、事例にとっての特有な介入報告が必要なのです
逆にエビデンスレベルの高い研究手法というのは、介入以外の因子を極力排除することが望ましいため、実際にみなさんが臨床で抱えている背景因子などを加味した介入というには参考になりにくいです
余談ですが、エビデンスレベルは『研究手法』に依存して決められますので、さまざまな要因(交絡因子)が絡み合うものを報告する『事例報告』は必然的にエビデンスレベルは低くなるのです
事例報告の特徴
事例報告の最大の特徴は『対象者の個別性に特化した報告』というところです
その事例でしか経験し得ないようなことを記述していくことで、具体的な介入方法を伝える(報告をみた人は知る)ことができます
そのまま報告を適用できる対象者はいないかもしれませんが、報告された内容を参考に応用し臨床や自宅で使えるケースというのは多々あります
高次脳機能障害の復職支援や、高齢者の想いのあるアクティビティの獲得などは、個別性に特化した事例報告の方が参考になることが多いです
タイトルで例を挙げると
『日記を使うことで自己効力感が高まり、趣味である菜園を再開することができた事例』
というような感じです(あくまで私が勝手に作った例です)
おそらくこの事例特有の介入をしたのだろう!というのがタイトルからわかります
- 個別性の高い介入報告をする
- 個人背景や周辺環境などが特殊な場合でもOK
- 対象者個別の介入を伝える(わかる)ことができる
理学療法士・作業療法士における症例報告

症例報告:クライエントの疾患や症状に焦点を当てた『症状の例』。特定のクライエントのためだけに採用された配慮やオーダーメイドの手法を排除するため、疫学的にエビデンスレベルの高い報告が可能
作業で語る事例報告: 作業療法レジメの書きかた・考えかた
要するに、症例報告とは『症例』とあるように、ある特定の症状に対して、あなたが介入を試み得た経験をまとめた『報告』となります
事例報告と混合しやすいのは、対象が1人の対象者であり、その介入経過をまとめるという方法だから、だと思います
症例報告の場合には、できるだけ背景因子や環境因子などを取り除き、一定の症状に対して行った介入の効果の報告を行うことが望ましいとされています
同じような症状をもった対象者さんがいた時には、適用をしやすい報告内容にした方が良いということです
症例報告の特徴
症例報告の最大の特徴は『個別の対象者の症状に特化した介入報告』というところです
対象者の特有な症状というのは、個別性が高いが、他の方にも起こり得るという貴重な体験になります
その体験を構造化して報告することで、聴講者や論文をみた人は、似た対象者が現れた時に参考にすることができます
『事例報告』よりも、個人因子や環境因子ができるだけ排除されている分、参考にできる幅も広くなります
症例報告を聞いていて『その介入って、その人だからこそできたんじゃないかな?』みたいな経験ありませんか?そういうのは『事例報告』に近いってことです
また、症例報告は研究テーマの第一歩となり得る重要な報告です。全ての研究は単一の症例から始まるといっても過言ではないです
症例報告のタイトル例を挙げるとすれば
『脳卒中後中等度上肢麻痺を呈した症例に対して、電気刺激療法とロボット療法を併用し、箸での食事動作を獲得した一例』
みたいな感じです
脳卒中後中等度麻痺という『症状』に対して、さまざまな療法を組み合わせた方法で介入し、箸での食事動作を獲得したということがタイトルからイメージが湧きます
- 個別性が高い『症状』についてまとめる
- できる限り、個人因子や環境因子を排除して、症状に焦点を当てる
- 研究の第一歩となり得る報告となる可能性がある
まとめ
今回の記事をまとめると
- 事例報告は『対象者の個別性に特化した報告』
- 症例報告は『ある特定の症状に対して、介入を試み得た経験をまとめた報告』
- 事例報告の特徴は『背景を加味した対象者へのより具体的な介入がわかり、介入のヒントになる』
- 症例報告の特徴は『症状に焦点を当てるため、他の類似した症状の対象者への適用がしやすい』
ということでした
各々に長所や短所があるため、自分が報告する方法はどちらがいいのか?聴講する場合や、論文を読む場合には、得たい情報はどちらの情報なのか?
を考えていただくとよいかと思います
最後まで見ていただきましてありがとうございました。事例報告と症例報告については混合しやすいと思いますが、今後は本記事で解説したような基準で考えていただくと、おおむね間違いはないかと思います!
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