短下肢装具の装着はいつが適切??

短下肢装具の装着はいつが適切??

こんにちはブログサイト管理者のKABAです。

私は作業療法士で回復期リハビリテーション(以下:回リハ)に従事しており、脳卒中の方々を中心に関わらせてもらうことが多いです。

その中で、回リハでは日常生活動作の獲得という部分が大きな目的となることが多いです。

日常生活を送る上で基本動作や移動手段というのは切り離せない部分であり、理学療法士と共同して移動手段を獲得していくことが必要となります。

今回は脳卒中患者の移動手段獲得の中で多く使われる『短下肢装具』について、装着時期がいつが適切なのか?装具装着が必要なのか?予後的に使うのか?などを作業療法士にもわかりやすく、尚且つしっかりとした先行研究を元に記事を上げていこうと思います。

結論から言うと、発症早い時期にはつける必要がなく、導入時期については個別性がある・・・・・です笑

では先行研究を参考にして、なぜこの結論になったかを見ていきましょう!

短下肢装具とは?

まず最初は短下肢装具の説明を簡単にしようと思います。

短下肢装具:下腿部〜足部までの装具であり、足関節の動きを制御することを目的に使用される。様々な種類があり、金属性の支柱の物や、プラスチック性の物もある。

作業療法士の方でも下肢装具と関わることは少なくないと思います。

しかし、どんなタイプがあるとか、特性があるとか、何を選べばいいかなんかは、ほとんどの場合PTの人が選ぶと思います。

ここではOTでもある程度理解しやすいように内容をまとめつつ、短下肢装具のことについてとエビデンスや先行研究を紹介していきます。

脳卒中患者で使用される用途としては、足関節の背屈が不十分であったり、足関節底屈方向へ筋緊張が強くなりやすい(内反尖足)方に対して、使用されることが多いかと思います。

それでは少しタイプ別にどんなものがあるかを紹介します。

シューホーンブレース(SHB)

パシフィックサプライ公式HPより引用

SHBは後面支柱式のプラスチック一体型の短下肢装具です。脳卒中患者への使用頻度としても比較的高頻度で使用されます。

プラスチックシートの素材や厚み、トリミングの形によって強度やたわみをコントロールし、本人の足にフィッティングします。

SHBの特徴としては、脱着が行いやすい、軽量である、外観が比較的よい、トリミングなどでたわみをつけることができることです。

シューホーンブレースについての詳細な情報は『脳卒中に対するシューホーン型短下肢装具の形状と適応』という論文を参考にしてみてください!2012年と少し古い論文ですが、詳しく書いてあります!

オルトップ

パシフィックサプライ公式HPより引用

オルトップは上記のSHBをトリミング(縁取り、型抜き)し、かかとの部分などを削ぎ落とすことで、固定性を低下させ、たわみを持たせることができる装具です。

足継手はないものの、足部が全て覆われた装具よりはロッカー機構(ヒールロッカー、アンクルロッカー、フォアフットロッカー)を引き出すことができます。

また、トリミングの具合により、硬度やたわみを調整し、患者の歩行能力にあわせて再調整をすることも可能です。

SHBでは固定力がありすぎるが、装具なしでは歩行時のクリアランス(床に足が擦らないようにする)を確保するには適応となる装具です。

作業療法士の目線からいうと、比較的長さも短く、かかとがトリミングされているため、靴などがやや履きやすく、おしゃれ靴もサイズを少し大きめで買えば履けなくはないので、在宅でも扱いやすい装具ではあると思います。

両側金属支柱

パシフィックサプライ公式HPより引用

金属支柱装具は長下肢装具を作成される際によく用いられる装具かと思われます。

この装具の最大の特徴は『高い筋緊張に対しても矯正力、固定力がある』ということでしょう。

足継手はいくつか種類を選ぶことができますので、クレンザック、ゲイトソリューションなど対象者にあった継手を選んで頂けたらと思います。

靴一体型もあれば、靴は別で履くというタイプもあります。屋内で使用する可能性を考慮しなければならないのであれば、靴と装具は別の方が良いでしょう。

固定力は強く、いい意味で安定性を高めることはできますが、自由度がないため、重度〜中等度の麻痺でやや改善傾向である・・と言った対象者の場合、処方を悩む部分ではあります。

また、装具が重く脱着がしづらいため、自宅に帰って使われなくなるケースが多く、結局リハビリの時専用になってしまう場合も少なくありません。

金属支柱が装具処方の選択肢にあがっている場合には十分に対象者の予後、今後の生活、費用などを鑑みた上で選択できるとよいでしょう。

ゲイトソリューションデザイン(GSD)

パシフィックサプライ公式HPより引用

GSDは足継手が油圧でコントロールされている継手を採用した短下肢装具です。見た目的にもオシャレに作られていまして、測定面と支柱さえ入れば靴もあまり選びません。

下腿部分の下部も、ズボンを上から覆ってしまえば、スキニータイプのズボンでなければ目立たないレベルです。

以下の『適応』と『効用』はパシフィックサプライ公式HPに紹介されているものと同一です。

適応

  • 片麻痺、腓骨神経麻痺等
  • 足関節底屈および内反筋群の痙性が軽度から中等度
  • 著しい足部の変形や拘縮がない。
  • 立脚相の著しい膝折れや反張膝がない。

このようにある程度適応としては軽度例であることが条件ではあります。筋緊張が高い方に対して、矯正力がある装具ではないため、注意が必要です。

効用(ゲイトソリューションを使用することにより以下の効用が期待できます。)
(1)踵接地時に底屈の動きを油圧により制動することにより滑らかな体重移動を可能にします。
(2)なめらかな体重移動により自然な歩容を得ると同時に左右の対称性、バランスのとれた歩容を実現することができます。
    バランスのとれた歩容を実現することによりきれいに歩ける、つかれない、歩行速度の増加などの効果を得ることができます。
(3)遊脚相つま先のクリアランスを確保することができます。

要するに運動学習(歩行学習)に特化した装具であるという認識の方が良いでしょう。

デメリットとしては、高価であるということです。

短下肢装具のエビデンス

脳卒中ガイドライン2015では

歩行障害に対するリハビリテーション

歩行や歩行に関連する下肢訓練量を多くすることは、歩行能力の改善のために強く勧められる(推奨グレードA)

内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(推奨グレードB)

脳卒中ガイドライン2015

と記載されています。

ガイドライン上で読み取れることとしては

歩行を行うために歩行量を多くすること、内反尖足などで歩行できない場合には短下肢装具を装着して運動量を増大させることが推奨される

というような感じで解釈することができると思います。

しかし、2015年のガイドライン以降に発表された近年の研究で、短下肢装具に大しての否定的な論文も散見されるようになりました。

短下肢装具についての近年の研究

ここでは近年報告されたシステマティックレビューとRCTについて紹介し、その研究からの解釈を簡単に書いていきます

The effect of ankle-foot orthoses on fall/ near fall incidence in patients with (sub-)acute stroke : A randomized controlled trial

『急性期〜亜急性期の脳卒中患者の転倒に対する短下肢装具の影響』という内容に訳すとちょうど良いですかね?

この研究の内容としては、脳卒中片麻痺を発症して、発症後1週間後と9週間後に短下肢装具を処方し、1〜8週目、9〜52週目までをフォローし転倒回数を比較したものとなっています。

The effect of ankle-foot orthoses on fall/ near fall incidence in patients with (sub-)acute stroke : A randomized controlled trialから引用

装具の内容としては、プラスチックタイプのもので、足継手の無い物(SHBタイプ)が提供されています。

装具は治療中、入院中、退院後自宅での生活全てで1日中付けるように指示されています。

また、全ての被験者に入院中には通常のリハビリテーション、退院後は必要に応じての外来リハビリテーションが行われています。

結果

  • 1〜8週目までは短下肢装具を1週目に与えられた患者は、まだ装具を与えられていない患者に比べて、有意に多く転倒(11回vs4回:2.9倍)していた。
  • また、早く装具を与えられたグループでの転倒の63.6%は装具をつけていない時に転倒していた(移乗時や立ち上がり時)
  • 転倒し損ねたという報告についてはグループ差はなかった

ということであった。

要するに、

発症後すぐに短下肢装具を使っての練習を行うと、それを外して動作をしなければならないタイミングの時に転倒リスクが高まります

って内容と解釈できます

Six-month effects of early or delayed provision of an ankle-foot orthosis in patients with (sub)acute stroke: a randomized controlled trial.

『急性期〜亜急性期の脳卒中患者に短下肢装具を早く処方したのと遅く処方したので6ヶ月後に与える影響』というような表題です。

上記の論文では転倒回数をアウトカム(結果)としてましたが、同一の研究方法でバランス能力と歩行能力をアウトカムにしたものとなります。

この研究の内容としては脳卒中片麻痺を発症して、発症後1週間後と9週間後に短下肢装具を処方し、6ヶ月目でどっちがどのように良かったのか?を検証するという研究内容となっています。

これは結論から述べると

発症6ヶ月時点でBBS、6分間歩行テスト、Functional Ambulation Categories(歩行評価)の数値にグループ間で有意な差はなかった

ということになっていますwww

一応統計学的な差はないにせよ、13周目くらいまでは早期に装具を処方されていた方が、スコア的には良かったという結果もあったが、6ヶ月時点ではどちらも差はなかったとのことです。

要するに、

発症後早く装具を与えても、転倒する可能性が高まる上に、予後的ににも差はない

という内容であったということですね

The effects of ankle-foot orthoses on walking speed in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials

『脳卒中患者の歩行速度における短下肢装具の影響』という論文が2019年12月に発表されました。

これはシステマティックレビューですので、過去に行われた脳卒中患者における短下肢装具と歩行速度についての関連研究を包括的にレビューしたものになります。

結果として1186人を含む14の研究があり

  • 歩行速度に関して、統計的有意な差ではないが、短下肢装具をつけた方が良いという僅かな効果があった
  • 電気刺激治療(FES)などでも同様の効果が得られていた
  • しかしどのエビデンスも質の低い又はとても質の低いものであった

ということが挙げられていた

このレビューを通しての結果は

短下肢装具を装着し、良い結果もあったが、質の低い根拠であり、歩行速度を改善させる強い根拠は見つからなかった

ということであった。

まとめ

今回は短下肢装具について簡単に情報をまとめ、近年の研究の動向を記事にさせてもらいました。

短下肢装具は臨床的に多く使われているにも関わらず、装具処方のタイミングを間違ったりすると転倒リスクを上げることになる

また、歩行速度を改善させるための手法として短下肢装具という装具療法は、現時点ではエビデンスが低いということがわかりました。

ネガティブな論文ではありましたが、実場面で短下肢装具が有用であるケースは多く存在すると筆者は思います。

日常生活の中にうまく取り入れて生活を行うことができれば、対象者の行動範囲を効率的に且つ安全に拡大できる有用なツールと思われるので、十分に注意しつつ選択して使っていきましょう